胆石症/胆嚢炎 <外科 診療内容>
胆嚢とは
胆嚢は、肝臓で作られた消化酵素を含んだ液体(胆汁)を濃縮し、一時的に蓄えるタンクの役割をしています。通常でも胆汁は自然に十二指腸に流出しておりますが、食事摂取が合図となり、各種ホルモンの作用で胆嚢が収縮し、より多くの胆汁が十二指腸へ流れ出ます(図24)。その胆嚢内に胆汁の成分やコレステロールが沈着し結石を生じたものを胆石症と呼びます。無症状で何年も経過する人も方もいますが、食後の心窩部痛や背部痛を生じる事もあり、また、結石が胆嚢の出口にはまり込んで動かなくなると、胆嚢内圧が上昇し胆嚢炎を来たすこともあります。
治療方針
胆石症・胆嚢炎の治療方針
非手術療法 ⇒ 溶解療法、体外衝撃波結石破砕術(ESWL)
手術療法 ⇒ 腹腔鏡下胆嚢摘出術
自覚症状がない場合は経過観察となる場合がありますが、ある統計では胆石症と胆嚢癌の間に何らかの因果関係があるとの報告もあり、エコーなどの画像検査にて経過観察する事がすすめられております。食後の心窩部痛や背部痛を繰り返すような場合は治療の対象となり、治療は手術と非手術療法があります。非手術療法では内服薬による溶解療法が中心となりますが、結石が溶ける石でなければなりません。薬で溶ける石はコレステロール結石ですが、画像上石灰化がなく、直径が15mm未満(できれば10mm未満)で浮く結石、などの条件を満たしていないと、なかなか薬で溶解する事は難しくなります。次に体外衝撃波結石破砕術(ESWL)ですが、ESWLには、比較的大きなコレステロール結石に対する「溶かす治療の効率を高める」という意味もありますので、適応は前述のようにコレステロール結石となります。しかし、問題点として、ESWLだけでは100%取り除くことは出来ないため、高率に再発する点が挙げられます。ESWLの治療経過中に胆嚢摘出術を受けた例が36%に達したとの報告もあり、今ではあまり積極的に行われない治療法となっております。
腹腔鏡下胆嚢摘出術
胆嚢結石症や胆嚢炎に対する手術は腹腔鏡下胆嚢摘出術が基本となります(図25,図26)。手術のタイミングは、胆石症など炎症が全く無い場合や、軽度の胆嚢炎の場合は、手術日程を組んで、待機的に腹腔鏡下胆嚢摘出術を予定します。炎症が中等度~高度の場合は、腹部症状も強く、胆嚢炎の細菌が全身に広がる事が懸念されるので、早期の手術が推奨されておりますが、経皮経肝的胆嚢ドレナージ(図27)を施行し、炎症を落ち着かせてから手術を行う場合もあります。個々の症例で、炎症の程度や全身状態を考え、手術のタイミングを決めております。胆嚢摘出術は腹腔鏡手術の良い適応で、よほど炎症が強く他臓器への癒着が強い場合を除いては、腹腔鏡で施行可能です。
術後経過
胆嚢を摘出するだけですので、翌日から食事を開始します。術後2-3日で経過がよければ退院は可能です。患者さまから「胆嚢は無くても大丈夫ですか?」との質問を多く受けますが、胆嚢を摘出した後に、消化吸収能力が低下する事はありません。摘出後、一時的に下痢に傾く方がいらっしゃいますが、時間が経てば改善していきます。